探偵に相談したのに依頼を受けてもらえなかった、または契約前に目的を詳しく聞かれた、という場面があるかもしれません。その背景には、探偵業法で定められた書面の受領や業務の規制があります。この記事では、個別の依頼が受けられるかどうかを判断するのではなく、警察庁の資料に示されている仕組みを整理し、依頼前に自分で確認しておきたい点をまとめます。
契約前に「違法な行為に用いない旨」の書面を求められる
警察庁の「探偵業について」では、探偵業者は依頼者と契約を締結しようとするときに、調査結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を、依頼者から受けなければならないと説明されています。
解釈運用基準では、この義務は依頼者ではなく探偵業者に課されたものとされています。また、「犯罪行為」は刑法に限らず刑罰法令に違反する行為をいい、例として配偶者暴力防止法に基づく保護命令に違反する行為が挙げられています。「違法な差別的取扱い」の例としては労働基準法で禁止されている労働条件の差別的取扱いが、「違法な行為」は刑事・民事を問わず違法と評価されるすべての行為をいうとされています。
違法な利用を「知ったとき」は業務を行えない
探偵業者は、調査結果が違法な行為のために用いられることを知ったときは、その探偵業務を行ってはならないとされています。解釈運用基準では、「知ったとき」には、従業者の報告などを通じて知った場合も含まれ、確定的に認識した場合のほか、そうした可能性を認識しつつ、そのように用いられても構わないと容認することも含まれるとされています。
基準では例として、家出した配偶者の所在の調査で、依頼者が保護命令を受けている可能性があると判明したときは、保護命令違反のために用いられるものでないことが明らかにならない限り、業務を行ってはならないとされています。契約前だけでなく、調査の途中でも業務が止まることがある、という点は知っておきたいところです。
探偵業務でも、他の法令の禁止・制限は変わらない
解釈運用基準では、探偵業法によって探偵業者に特別の権限が与えられるわけではないとされています。他の法令で禁止されている行為の例として、対象者を見張るために付近住民宅の敷地に許可なく入る行為や、電話を盗聴する行為が、制限されている行為の例として住民基本台帳の閲覧や個人データの第三者提供が挙げられています。
また、探偵業者は人の生活の平穏を害するなど個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならないとされています。依頼したい内容がこうした行為を前提にしていないかは、相談の段階で事業者に確認してよい点です。
依頼前に自分で整理しておくこと
自分の依頼が受けられるかどうかの判断は、事業者が行うものです。依頼者としては、目的と結果の使い道を自分の言葉で説明できるように整理しておくと、相談が進めやすくなります。判断に迷う場合は、どの点が確認事項になっているのかを事業者に尋ねてみましょう。
確認表①依頼前の自己整理メモ
| 項目 | 自分のメモ |
|---|---|
| 調査で知りたいこと | |
| 知りたい理由 | |
| 結果を何に使う予定か | |
| 結果を誰に見せる予定か | |
| 自分と調査対象の関係 | |
| 事業者に伝えておくべき事情 |
確認表②事業者への質問
| 質問 | 回答メモ |
|---|---|
| 違法な行為に用いない旨の書面は、どの書式で、いつ提出するか | |
| 書面の内容で分からない言葉の意味 | |
| 依頼内容のうち、確認が必要とされている点はどこか | |
| 想定している調査方法は何か | |
| 調査の途中で業務を止める場合、どのような連絡があるか | |
| 途中で止まった場合の料金・資料の扱いは書面のどこにあるか |
探偵業者は、違法な行為に用いない旨の書面を依頼者から受け取り、違法な利用を知ったときは業務を行わないことが求められています。依頼が受けられるかどうかの判断は事業者が行うものですが、目的や使い道を整理し、確認が必要な点を質問しておくことで、相談をスムーズに進めやすくなります。
確認した公式情報
確認日:2026年10月30日
警察庁「探偵業について」/解釈運用基準 第6 探偵業務の実施の原則、第7 書面の交付を受ける義務、第9 探偵業務の実施に関する規制
